両方のテストで力を発揮できる子に育てる~今日からできる実践ステップ~

「真の学力」とは何か?

5日間、定期テストと実力テストの違い、タイプ別の特徴と対策についてお話ししてきました。

最終日の今日は、最も大切なことをお伝えします。

本当のゴールは、「定期テストで点を取ること」でも「実力テストで点を取ること」でもありません。

**「どちらでも力を発揮できる、真の学力を身につけること」**なのです。

教員を25年してきて、たくさんの卒業生を社会に送り出してきました。そして気づいたことがあります。

社会に出て活躍している人たちに共通しているのは、テストの点数が良かったことではなく:

・学び方を知っている(知識の量ではない)

・理解する力がある(暗記力ではない)

・考える習慣がついている(詰め込みではない)

・自分で課題を見つけて解決できる(指示待ちではない)

ということです。

定期テスト型の強み(計画性・継続力・真面目さ)と、実力テスト型の強み(理解力・応用力・論理的思考)、両方を持ち合わせている人が、最も成長し続けられるのです。

両方の力を育てる「4つの習慣」

では、どうすれば両方の力を育てられるのでしょうか?

今日からできる「4つの習慣」をご紹介します。これは特別なことではなく、日常生活の中で実践できることばかりです。

習慣1:日常に「なぜ?」を組み込む

知識を詰め込むのではなく、理解を深める習慣をつけましょう。

【食卓での会話例】

❌「今日、学校どうだった?」「別に」

⭕「今日のニュースで、○○ってやってたけど、なんでこうなったと思う?」

❌「宿題やった?」

⭕「今日の数学、どんなこと習ったの?お母さんにも教えて」

【買い物中の会話例】

「このりんご、なんで青森産が多いんだろうね?」

「冬にハウス栽培の野菜が多いのはなぜだと思う?」

「このお菓子、なんで賞味期限が長いんだろう?」

【ドライブ中の会話例】

「なんでこの道、カーブが多いんだと思う?」→ 地形の話へ

「トンネルってどうやって作るんだろうね?」→ 工学の話へ

「なんで高速道路は有料なんだろう?」→ 経済・社会の話へ

ポイント

答えが分からなくても大丈夫。一緒に考えたり、調べたりするプロセスが大切なのです。

「お母さんもわからないから、一緒に調べてみようか」という姿勢が、子どもの探究心を育てます。

実践のコツ

・1日1回、必ず「なぜ?」の会話を

・子どもが答えられなくても責めない

・「面白い考えだね」と肯定する

・親自身も「なぜだろう?」と考える姿勢を見せる

習慣2:定期的な復習システムを作る

長期記憶を作るには、定期的な復習が不可欠です。

でも、「復習しなさい」と言うだけでは子どもは動きません。システムを作ることが大切です。

【家庭でできる復習システム】

◎月末「復習デー」の設定

毎月最後の日曜日は「復習デー」。2時間だけ、今月習ったことを振り返ります。

・1時間目:定期テストがあった教科の見直し

・2時間目:ノートやプリントを整理して、重要ポイントをまとめる

・長期休みの「総復習タイム」

・夏休み:1学期の総復習(1週間程度)

・冬休み:2学期の総復習(数日)

・春休み:学年の総復習(3日程度)

◎「1-7-30-90」復習サイクル

学習した日の夜(1日後):5分見返す

・1週間後:10分、問題を解く

・1ヶ月後:15分、応用問題に挑戦

・3ヶ月後:20分、テスト形式で確認

ポイント

完璧を求めない。「思い出す」だけで記憶の定着率が上がります。

スマホのカレンダーにリマインダーを設定すると、忘れずに実行できます。

習慣3:学びと実生活をつなげる

「なぜ勉強するのか」が分かると、子どもの学習意欲は大きく変わります。

【教科別・実生活とのつなげ方】

数学

割合:「セールで30%オフって、実際いくらになる?一緒に計算してみよう」

関数:「お風呂に水を貯める時間、計算できるね」

図形:「この部屋の面積、図面から計算してみて」

理科

電気:「なんでスマホは充電できるの?」「電気代、どうやって計算されてるんだろう?」

天気:「明日の天気予報、気圧配置から予想してみて」

人体:「運動した後、なんで心臓がドキドキするの?」

英語

「この洋楽の歌詞、どんな意味だと思う?」

「海外旅行で使える英語、考えてみよう」

「この商品の英語説明、読んでみて」

社会

歴史:「このニュース、歴史の○○の時と似てるね」

地理:「この国、なんでこんなに発展したんだろう?」

公民:「選挙って、どういう仕組み?」

国語

「この小説、作者は何を伝えたかったんだろう?」

「このニュース記事、何が言いたいか要約してみて」

「敬語の使い分け、実際にやってみよう」

実践のコツ

無理やり「勉強」に結びつけない。自然な会話の中で、「あ、これ学校で習ったことだ」と気づかせることが大切。

習慣4:「教え合い」の時間を作る

最強の学習法は「教えること」。家族で教え合う時間を作りましょう。

【家族で教え合いタイム】

・日曜日の夕食後30分

・子ども:今週習った中で一番面白かったことを家族に教える

・親:仕事で学んだことや、ニュースで知ったことを教える

・兄弟姉妹:お互いに得意なことを教え合う

ルール

・聞く人は、必ず質問する(「なぜ?」「どういうこと?」)

・教える人は、分かりやすく説明する努力をする

・分からなかったら一緒に調べる

効果

・子ども:理解が深まる、説明する力がつく

・親:子どもが何を学んでいるか分かる

・家族:会話が増える、学びが楽しくなる

バリエーション

・「先生ごっこ」:子どもが先生役、親が生徒役

・「クイズ大会」:習った内容をクイズにして出し合う

・「ディベート」:賛成・反対に分かれて議論する


今週から始める具体的アクションプラン

年齢や学年によって、効果的なアプローチは違います。お子さんに合ったプランを選んでください。

【中学生】

今週のアクション

・テストタイプを一緒に確認する

・弱点を補う勉強法を一つ選んで始める

・定期テストまたは実力テスト後に「復習ノート」作り(A4用紙1枚でOK)

・月1回、過去の内容を「クイズ大会」形式で復習

1ヶ月の目標

・新しい勉強法が習慣になってきる

・苦手なテストへの苦手意識が少し減る

3ヶ月の目標

・苦手だったテストでも点数が上がり始める

・勉強への自信がついてくる

【高校生】

今週のアクション

・自分の学習スタイルを客観的に分析してもらう

・参考書選びから本人に任せる

・進路について対話する時間を作る(押しつけない)

・必要な時にサポートできる体制だけ整える

1ヶ月の目標

・自分で学習計画を立てられるようになる

・親に頼らず勉強できるようになる

3ヶ月の目標

・自律的な学習習慣が確立する

・進路に向けて主体的に動き始める


親のサポートで変わった成功事例

最後に、実際に両方の力を手に入れたお子さんの事例をご紹介します。

【事例1:定期テスト型から両方型へ】高校1年生Gさん

Before(中学時代)

・定期テスト:平均75点

・実力テスト:平均50点

・高校受験で苦戦、第二志望に進学

取り組んだこと

・毎週日曜の「お母さんへの授業タイム」30分

・その週に習った内容を、お母さんに教える

・「なぜノート」の作成勉強中に浮かんだ「なぜ?」を書き留め、調べる

・興味と勉強をつなげる

・好きなK-POPから韓国の歴史へ、世界史全体への興味を広げた

After(高校2年現在)

・定期テスト:平均80点(維持)

・実力テスト:平均75点(大幅UP)

・学年順位が120位→35位に

本人の言葉:

「今まで『覚える勉強』だったけど、『理解する勉強』に変わったら、勉強が楽しくなった。忘れなくなったし、応用問題も解けるようになった」

【事例2:実力テスト型から両方型へ】中学3年生Hくん

Before

・定期テスト:平均60点

・実力テスト:平均80点

・内申点が低くて志望校を下げるか悩んでいた

取り組んだこと

・「最低限ライン」の明確化

・5教科それぞれ「これだけは」というポイントを絞った

提出物管理システム

スマホのリマインダー+提出物ボックスで確実に提出

「ゲーム化」戦略

テスト勉強を攻略ゲームと考えることで楽しく取り組めた

お父さんとの「戦略会議」

テスト2週間前に、どこをどう攻めるか相談

After

・定期テスト:平均73点(大幅UP)

・実力テスト:平均82点(維持)

・内申点が上がり、第一志望に推薦で合格

本人の言葉:

「定期テストも『戦略的にやれば攻略できる』って分かったら、急に楽しくなった。完璧を目指さなくていいって分かって楽になった」

【事例3:バランス型を目指して】中学2年生Iさん

Before

・どちらも中途半端(両方とも65点前後)

・自分に自信がなく「私、勉強できない」が口癖

取り組んだこと

・「4つの習慣」を家族全員で実践

・夕食時の「なぜ?」会話

・月末の復習デー

・日常と勉強のつながりを意識

・日曜の教え合いタイム

・得意教科を一つ作る作戦

・まず理科だけ頑張ることに決めた

・スモールステップで成功体験を積む

After(半年後)

理科:75点→90点に

他の教科も徐々に上昇(平均70点台に)

「私、理科得意かも」と自信がついた

お母さんの言葉:

「親の私が変わったら、子どもも変わりました。点数を責めるのをやめて、過程を褒めるようにしたら、子どもが勉強について話してくれるようになった」


テストの点数に一喜一憂しないための心構え

最後に、保護者の皆さんに最もお伝えしたいことがあります。

お子さんの価値は、テストの点数では測れません。

定期テストが得意でも、実力テストが得意でも、どちらでも。それは単なる「今の特性」であって、お子さんの可能性を決めるものではありません。

テストは「スナップ写真」、人生は「長編映画」

テストの点数は、その時のお子さんの状態を映す「スナップ写真」のようなもの。

大切なのは、その写真を見て一喜一憂することではなく、お子さんの成長という「長編映画」を信じて見守ることです。

映画には、山あり谷あり。今は谷にいるように見えても、それは次の山へ向かうための準備期間かもしれません。


親として大切にしたい3つの視点

①長期的な視点

・今の点数より、3年後、5年後、10年後を見据える

・「学び続ける力」が育っているか

・プロセス重視の視点

・結果より、どう取り組んだか

・失敗から何を学んだか

②個性尊重の視点

・他の子との比較ではなく、その子らしさを大切に

・得意を伸ばしながら、苦手も少しずつ改善

・心が疲れた時に読み返したい言葉

 「あなたの子は、あなたの子として生まれてきた。他の誰でもない、かけがえのない存在。

 テストの点数が低くても、あなたの愛情が減ることはない。

 今日も明日も、ずっと応援し続ける。

 それを伝え続けることが、最高の教育


今日から始める「小さな一歩」チェックリスト

5日間のシリーズで学んだことを、今日から実践するためのチェックリストです。

全部を完璧にする必要はありません。できることから、一つずつ。

□ まず、子どもの話を最後まで遮らずに聞く

□ 1日1回、「なぜ?」と聞いてみる(答えは求めない)

□ テストの点数より、頑張った過程を褒める

□ 子どものタイプを理解し、それを認める声かけをする

□ 「一緒に考えよう」という姿勢を持つ

□ 月1回、過去の復習タイムを作る

□ 学びと実生活のつながりを会話に入れる

□ 週1回、子どもに「教えてもらう」時間を作る

□ 他の子と比較しない

□ 親自身も学ぶ姿勢を見せる(本を読む、ニュースを見るなど)

おわりに~保護者の皆さんへ~

5日間、お付き合いいただきありがとうございました。

テストは、お子さんの成長を測る一つの「物差し」に過ぎません。

定期テストも実力テストも、お子さんの「今」を知る手がかりにはなりますが、お子さんの未来を決めるものではありません。

お子さんの未来は、無限の可能性に満ちています。

定期テスト型でも、実力テスト型でも、それはお子さんにしかない素晴らしい個性です。

その個性を大切に育てながら、少しずつ両方の力を伸ばしていく。

そんな長期的な視点で、お子さんの成長を見守っていきましょう。

一番大切なメッセージ

お子さんが今、どんな点数を取っていても、どんな状況にあっても:

「あなたは素晴らしい子だよ」

「お母さん(お父さん)は、あなたの味方だよ」

「どんな道を選んでも、応援してるよ」

この言葉を、言葉だけでなく、態度でも、日々の関わりでも、伝え続けてください。

それが、お子さんの学びへの意欲を支える、最も大きな力になります。

もし困った時は、いつでも塾にご相談ください。25年の経験から、お子さんとご家族に最適なアドバイスをさせていただきます。

来週からは、また新しいテーマで、お子さんの成長に役立つ情報をお届けします。お楽しみに!

今夜、お子さんに「お母さん(お父さん)は、あなたがどんな風に成長していっても、ずっと応援してるよ」と伝えてみてください。

そして、ぎゅっと抱きしめてあげてください(恥ずかしがられるかもしれませんが!)。

その温かさが、明日からの学びへのエネルギーになります。

お子さんの成長を、一緒に見守っていきましょう。

【追伸】

今回のブログシリーズが少しでもお役に立てたなら嬉しいです。

もし「うちの子、こんな感じなんですが...」というご相談があれば、いつでも塾にお越しください。

一人ひとりのお子さんに合わせた、具体的なアドバイスをさせていただきます。

お子さんの笑顔と成長のために、私たちも全力でサポートします!

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