お父さんの一言が子どもを変える - 父親だからこそできる声掛けの力
なぜ「お父さんの言葉」は特別なのか
「パパにそう言われると嬉しい」
塾で子どもたちと面談していると、こんな言葉をよく耳にします。15年間塾を経営してきて気づいたのは、お父さんの言葉には、お母さんとは違う特別な力があるということです。
普段は仕事で忙しく、お母さんほど頻繁に声をかけられないお父さん。だからこそ、その一言一言が子どもの心に深く刻まれるのです。
ある中学2年生の男の子が、こう話してくれました。
「お母さんには毎日『勉強しなさい』って言われるけど、正直あまり響かない。でも、この前お父さんが『お前、最近頑張ってるな』って言ってくれた時、すごく嬉しくて、もっと頑張ろうって思った」
頻度が少ないからこそ、重みがある。これがお父さんの言葉の力です。
母親との違い:父親の声掛けが持つ独自の影響力
多くの家庭では、お母さんが日常的な学習管理を担当しています。宿題のチェック、テストの確認、塾への送迎...。お母さんは子どもの学習に深く関わっているからこそ、時に細かく、時に厳しくなってしまいます。
一方、お父さんは少し距離があるからこそ、「俯瞰的な視点」を持てるのです。
お母さんが「今日のテストはどうだった?」と具体的に聞くとき、お父さんは「最近どう?学校楽しい?」と大きく聞く。
お母さんが「この問題が間違ってるわよ」と指摘するとき、お父さんは「よく頑張ってるじゃないか」と全体を見る。
この違いが、子どもにとってバランスの取れた成長環境を作るのです。
特に、思春期の男の子にとって、父親は「将来の自分のモデル」です。お父さんの言葉は、単なるアドバイスではなく、「人生の先輩からのメッセージ」として受け取られます。
女の子にとっても、父親からの言葉は特別です。「お父さんに認めてもらえた」という経験は、自己肯定感を大きく高めます。
仕事で培った経験が子育てに活きる瞬間
「私は子育てのことはよくわからない」
そう言うお父さんは多いです。でも、実はお父さんは、仕事で培った貴重な経験を持っているのです。
プロジェクトの進め方、目標設定の方法、困難を乗り越えた経験、失敗から学んだこと、人間関係の築き方...。これらは全て、子どもの学びに応用できる知恵です。
例えば、営業の仕事をしているお父さん。
「俺も新規顧客に断られ続けた時は辛かったけど、一つ一つ改善していったら、だんだん成果が出てきたんだよ」
こんな話は、テストで点数が取れずに悩んでいる子どもにとって、参考書のどんな言葉よりも心に響きます。
エンジニアのお父さんなら、バグの原因を一つ一つ探していくプロセスが、問題を解く手順と重なります。
管理職のお父さんなら、チームをまとめる経験が、グループ学習やクラスでの役割に活かせます。
専門知識を教える必要はありません。お父さんの「働く姿勢」「問題解決の考え方」そのものが、子どもにとって最高の教材なのです。
「忙しいお父さん」でもできる日常の声掛けチャンス
「平日は帰りが遅くて、子どもと話す時間がない」
多くのお父さんが抱える悩みです。でも、声掛けに必要なのは「長い時間」ではなく、「質の高い瞬間」です。
・朝の出勤前(30秒でOK)
「おはよう。今日も頑張ってな」
たったこれだけでも、子どもは「お父さんは自分のことを見てくれている」と感じます。
・夜の帰宅後(5分あれば十分)
子どもがまだ起きていたら、寝室をちょっと覗いてみてください。
「今日はどうだった?」
短い会話でも、毎日続けることで信頼関係が築かれます。
・メッセージアプリの活用
直接話せない時は、LINEやメールで一言送るのも効果的です。
「今日のテスト、どうだった?」
「頑張ってるな。応援してるぞ」
お父さんからのメッセージは、子どもにとって宝物になります。
・週末の特別な時間
休日は、じっくり向き合える貴重な機会です。
一緒に散歩しながら、買い物に行きながら、車で移動しながら...。
「何か困ってることある?」
横並びで歩きながらの会話は、正面から向き合うよりも子どもが話しやすいものです。
まずは観察から:子どもの「今」を知ることから始めよう
効果的な声掛けの第一歩は、子どもの現状を知ることです。
【観察のポイント】
表情と様子
朝起きてきた時の顔色、帰宅時の表情、食事中の態度...。言葉にしなくても、子どもの状態は態度に表れます。
生活リズム
いつも何時に寝て、何時に起きているか。スマホをどれくらい見ているか。宿題にどれくらい時間をかけているか。
興味関心
最近何に夢中になっているか。友達とどんな話をしているか。どんな動画を見ているか。
変化のサイン
以前と比べて何か変わったことはないか。元気がない、イライラしている、逆にやけに明るいなど。
観察するときのコツは、「評価しない」ことです。
「またゲームばかりして...」と思うのではなく、
「最近はこのゲームに夢中なんだな」と、まず事実を受け止めます。
そして、お母さんから日常の様子を聞くことも大切です。
「最近、〇〇の様子はどう?」
お母さんの視点と自分の観察を合わせることで、より正確に子どもの状態を把握できます。
まずは1週間、観察してみてください
明日からは、具体的な「良い声掛け」の方法をお伝えします。でも、その前に今週は、じっくり子どもを観察する1週間にしてみてください。
何も言わなくていいんです。ただ、見守る。気づく。関心を持つ。
それだけで、来週からの声掛けの質が大きく変わります。
今夜、お子さんの寝顔を見てみてください。小さかった頃の顔が重なって見えるかもしれません。その子が今、どんなことで悩み、何に挑戦しているのか。お父さんの関心が、明日からの声掛けの原動力になります。
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