『勉強しなさい』を言わずに学習習慣をつける父親の関わり方
「一緒に」の魔法:並走する父親の姿勢が子どもを動かす
「勉強しろ」と言わずに子どもが勉強するようになる。そんな魔法のような方法があります。それが「一緒に」という関わり方です。
「一緒に勉強する」とは?
お父さんが子どもの勉強を教える必要はありません。同じ空間で、それぞれの作業をするだけでいいのです。
・子どもがリビングで宿題をしている横で、お父さんは仕事の資料を読む
・子どもが英単語を覚えている横で、お父さんは新聞を読む
・子どもが数学の問題を解いている横で、お父さんは読書をする
なぜ効果的なのか
「一人じゃない」安心感
勉強は孤独な作業です。でも、横にお父さんがいるだけで、「一人で頑張ってるわけじゃない」という安心感が生まれます。
お父さんの姿が「学び」のモデルに
お父さんが本を読んだり、資料を調べたりしている姿を見て、「大人になっても学び続けるんだ」と理解します。
自然な会話のきっかけ
「お父さん、この問題わからないんだけど」
「お父さんは何読んでるの?」
自然な会話が生まれ、コミュニケーションが深まります。
【実際の成功例]
ある父親は、毎晩子どもが勉強する時間に、自分も資格試験の勉強を始めました。
最初、子どもは「お父さんも勉強するの?」と驚いていましたが、やがて「一緒に頑張ろう」と言うようになりました。
半年後、子どもの成績は上がり、お父さんは資格試験に合格。お互いの頑張りを認め合う、素敵な関係が築けたそうです。
「一緒に」のバリエーション
勉強だけではありません。
・一緒に図書館に行く
・一緒に本屋に行って、それぞれ好きな本を買う
・一緒に博物館や科学館に行く
・一緒にドキュメンタリー番組を見る
・一緒にニュースについて話し合う
「学び」を共有することで、子どもの知的好奇心が自然に育ちます。
仕事の話を学びに変換:日常会話から知的好奇心を刺激する
お父さんの仕事の話は、子どもにとって最高の「生きた教材」です。
仕事の話が学びにつながる理由
・現実社会とのつながり
「勉強は将来役に立つ」と言われても、子どもにはピンときません。でも、お父さんの仕事の話を聞くことで、「学んだことが実際にどう使われるか」がイメージできます。
・多様な視点
お父さんの仕事を通じて、様々な業界、職種、働き方を知ることができます。
・問題解決の思考プロセス
仕事での問題解決の話は、勉強での問題解決にも応用できます。
・効果的な仕事の話し方
パターン1:専門知識を日常化する
営業職のお父さん:
「今日、プレゼンで提案したんだけど、相手の表情を見ながら説明の仕方を変えたんだ。これって、お前が友達に何か説明する時も同じだよね」
エンジニアのお父さん:
「プログラムにバグが見つかって、一つ一つ原因を探したんだ。数学の問題を解く時も、どこで間違えたか確認するのが大事だよね」
パターン2:失敗から学ぶ姿勢を見せる
「今日、大事な書類の期限を間違えてて、上司に注意された。お父さんでも、こういうミスをするんだよ。だから、確認って本当に大事だなって思った」
子どもは、「お父さんでも失敗するんだ。失敗してもいいんだ」と安心します。
パターン3:学んだことが役立った経験を共有
「今日の会議で、英語の資料を読まなきゃいけなくてさ。学生時代にもっと英語を勉強しておけばよかったって思ったよ。お前は今、英語を勉強できるチャンスがあるから、大切にしてほしいな」
押し付けではなく、自分の経験から自然に伝えることがポイントです。
パターン4:仕事で使う数学・理科・社会
「今日、エクセルで複雑な計算をしたんだけど、関数を使ったら一瞬で終わった。数学って、こういう時に役立つんだよ」
「取引先の会社の業績を調べる時、社会で習った経済の知識が役立つんだ」
具体的な活用例を話すことで、勉強の意味が実感できます。
質問力で子どもの思考を深める:「教えない」関わり方
お父さんの役割は、答えを教えることではなく、子どもが自分で考える力を引き出すことです。
効果的な質問の5つのパターン
パターン1:オープンクエスチョン
❌ 「答えはわかった?」
⭕ 「どうやって考えたの?」
❌ 「難しい?」
⭕ 「どこが一番難しいと感じる?」
「はい・いいえ」では答えられない質問をすることで、子どもの思考を引き出します。
パターン2:考えを深める質問
「なるほど、そう考えたんだね。他にはどんな方法があると思う?」
「その答えになった理由を教えてくれる?」
「もし○○だったら、どうなると思う?」
子どもの答えを受け止めた上で、さらに深く考えるきっかけを作ります。
パターン3:仮説を立てる質問
「もしこうだったら、どうなると思う?」
「なぜこうなると思う?」
「次はどうなると予想する?」
仮説を立てて検証する思考プロセスは、科学的思考の基本です。
パターン4:関連づける質問
「これって、前に勉強した○○と似てない?」
「日常生活で、これに似たことってある?」
「この知識は、どんな時に使えそう?」
知識を関連づけることで、理解が深まります。
パターン5:振り返る質問
「今日の勉強で、一番面白かったことは何?」
「今日学んだことで、一番大事だと思うことは?」
「今日の勉強で、難しかったところはある?」
自分の学びを振り返ることで、メタ認知能力が育ちます。
「教えない」勇気
子どもに「お父さん、この問題教えて」と言われた時、すぐに答えを教えるのではなく、こう返してみてください。
「お父さんもちょっと考えさせて。一緒に考えてみようか」
そして、一緒に教科書を見たり、辞書を引いたり、インターネットで調べたりする。
このプロセスが、子どもの「自分で調べる力」「自分で考える力」を育てます。
【実際の会話例】
子ども「お父さん、この算数の問題わからない」
お父さん「どれどれ。うん、確かに難しそうだね。どこまで考えた?」
子ども「ここまではわかったんだけど、次がわからない」
お父さん「なるほど、ここまではできたんだ。すごいじゃん。じゃあ、この部分で使えそうな公式って何かある?」
子ども「うーん、これかな?」
お父さん「それを使ったら、どうなる?一緒にやってみようか」
答えを教えるのではなく、考えるプロセスを一緒に歩む。これが最高の学習サポートです。
失敗談こそ最高の教材:お父さんの挫折経験を共有する価値
完璧なお父さんの姿を見せる必要はありません。むしろ、失敗や挫折の経験こそ、子どもにとって価値ある学びになります。
失敗談が子どもに与える3つの効果
1. 「失敗してもいいんだ」という安心感
お父さんでも失敗するんだ。失敗は恥ずかしいことじゃないんだ。そう理解することで、子どもは失敗を恐れず挑戦できるようになります。
2. 「乗り越える力」のモデル
失敗したという事実だけでなく、どうやって乗り越えたかを伝えることで、困難に立ち向かう力が育ちます。
3. 親子の距離が縮まる
完璧なお父さんは、近寄りがたい存在です。でも、失敗を共有することで、「お父さんも自分と同じ人間なんだ」と感じ、距離が縮まります。
効果的な失敗談の話し方
失敗談の構成
・どんな失敗をしたか(具体的に)
・その時どう感じたか(感情を共有)
・どうやって乗り越えたか(プロセス)
・そこから何を学んだか(教訓)
・今振り返ってどう思うか(現在の視点)
実例1:勉強での失敗
「お父さん、高校の時、数学が本当に苦手でさ。定期テストで赤点取って、追試を受けたことあるんだ。その時は本当に情けなくて、落ち込んだよ。
でも、先生に『基礎からやり直そう』って言われて、中学の内容から復習したんだ。最初は恥ずかしかったけど、わからないままにしておくよりずっとよかった。
半年かかったけど、だんだんわかるようになって、最終的には数学が一番好きな科目になった。
あの時学んだのは、『わからないことは恥ずかしいことじゃない。わからないままにしておくことが問題なんだ』ってこと。今でも、仕事でわからないことがあったら、すぐに人に聞くようにしてるよ」
実例2:人間関係での失敗
「お父さんが新入社員の時、先輩に生意気な態度を取っちゃって、すごく嫌われたことがあるんだ。一人で何でもできると思ってたんだけど、実際は全然できなくて。
その時、別の先輩が『謝って、素直に教えてもらったらどう?』ってアドバイスしてくれた。すごく勇気が必要だったけど、謝って、『教えてください』ってお願いしたら、その先輩も優しく接してくれるようになった。
人間関係って、自分の姿勢一つで変わるんだって、あの時学んだよ。お前も学校で何かあったら、素直になることを忘れないでね」
実例3:挑戦での失敗
「お父さん、実は大学受験で第一志望に落ちたんだよ。すごくショックで、しばらく立ち直れなかった。
でも、滑り止めで受かった大学に行ったら、そこで一生の友達に出会えた。今の仕事にもつながってる。
あの時学んだのは、『人生に無駄な経験はない』ってこと。失敗したと思ったことが、後から考えると良い経験だったってこと、よくあるんだよ」
タイミングが大事
失敗談は、子どもが困っている時、落ち込んでいる時に話すと効果的です。
説教として話すのではなく、「そういえば、お父さんもこんなことがあったな」と自然に共有することがポイントです。
良い声掛け・避けたい声掛け【総合実践例】
ここまで学んだことを、実際のシーン別にまとめます。
シーン1:テストの結果が返ってきた時
【悪い点数だった場合】
❌ 避けたい声掛け
「何でこんな点数なんだ!」
「もっと勉強しろって言っただろ!」
「これじゃ志望校は無理だな」
⭕ 良い声掛け
「そうか、思ったより点数が取れなかったんだね」(共感)
「どこが難しかった?」(分析)
「次に向けて、何か対策を考えてみようか」(未来志向)
「お父さんも昔、似たような経験あるよ」(共有)
【良い点数だった場合】
❌ 避けたい声掛け
「次もこの点数を維持しろよ」(プレッシャー)
「これが当たり前だからな」(評価の無効化)
⭕ 良い声掛け
「頑張った成果が出たね」(プロセスの承認)
「どんな勉強法が効果的だった?」(振り返り)
「嬉しそうだね。お父さんも嬉しいよ」(感情の共有)
シーン2:宿題をやらずにゲームをしている時
❌ 避けたい声掛け
「いつまでゲームしてるんだ!今すぐやめて勉強しろ!」
「宿題が先だろ!」
⭕ 良い声掛け
「そのゲーム、面白そうだね。どんなゲーム?」(関心)
「ところで、今日の宿題ってどれくらいあるの?」(確認)
「いつやる予定?夕飯の前?後?」(選択肢)
「お父さんも仕事が一段落したら、夕飯前に一緒に勉強時間作ろうかな」(並走)
シーン3:「勉強がわからない」と相談された時
❌ 避けたい声掛け
「こんなのもわからないのか」
「授業ちゃんと聞いてないからだ」
「お母さんに聞いて」
⭕ 良い声掛け
「どこがわからない?」(具体化)
「ここまではわかったんだね」(できている部分の承認)
「一緒に考えてみようか」(並走)
「わからないことを質問できるのは、素晴らしいことだよ」(勇気の承認)
シーン4:「学校に行きたくない」と言われた時
❌ 避けたい声掛け
「甘えるな!行きなさい!」
「そんな弱音を吐くな」
「サボったら将来困るぞ」
⭕ 良い声掛け
「そうか、今日は行きたくない気分なんだね」(受容)
「何かあった?」(理解しようとする姿勢)
「話せる範囲で、お父さんに教えてくれる?」(安心感)
「お父さんも若い頃、そういう時あったよ」(共感)
「今日は無理しなくていいからね。ゆっくり考えよう」(安全基地)
シーン5:志望校について話す時
❌ 避けたい声掛け
「お前の成績じゃ無理だろ」
「もっとレベルの高い学校を目指せ」
「お父さんの母校に行け」
⭕ 良い声掛け
「どうしてその学校に行きたいの?」(理由を聞く)
「いいね。その学校の何が魅力なの?」(関心)
「その夢を叶えるために、今できることは何だろう?」(未来志向)
「お父さんも応援するよ」(支援)
明日は最終回。今日学んだことを踏まえて、長期的な視点で子どもの成長を支える方法をお伝えします。今夜は、お子さんとの会話で「質問力」を意識してみてください。答えを教えるのではなく、一緒に考える。それが、お父さんだからこそできる最高のサポートです。
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