なないろ学習塾が大切にしている “学びに向かう力”とは
■ はじめに——“学力の三要素”の第三領域こそ、特性のある子の支援の核心にある
文部科学省の学習指導要領(2020年改訂)では、学力の三要素として
・知識・技能
・思考力・判断力・表現力
・学びに向かう力・人間性等
が定義されています。
このうち第三の要素は、学校現場ではまだ十分に扱いきれていません。
特に、発達特性のある子どもにとっては「学力」よりも前段階として、
“学ぶことに向かうための力”が必要不可欠です。
第4話までで、学校の外に「なないろ学習塾」をつくる必要性を述べてきました。
最終話となる今回は、その理念の中心にある
“学びに向かう力”の再定義
について、教育関係者の視点から詳しく説明します。
■ 「学びに向かう力」を誤解していないか?
多くの教育現場で誤解されやすいのは、
学びに向かう力=やる気・生活習慣・自己管理能力
と捉えてしまうことです。
もちろんそれらも一部ですが、本質は違います。
ベネッセ教育総合研究所の定義では、
・好奇心
・自己主張
・協調性
・自己抑制
・がんばる力
が「学びに向かう力」と位置づけられています。
しかし特性のある子どもの場合、
これらの力は行動の“結果”ではなく、環境設定によって大きく左右される要素
であることが重要です。
つまり、
「できない」→「努力不足」
ではなく、
「できない」→「環境が合っていない」
という可能性が極めて高いのです。
■ 特性のある子どもの“学びのつまずき”は、能力ではなく構造の問題
学校で見られる以下の行動——
・落ち着いて座れない
・課題が始められない
・宿題が出せない
・読字・書字に時間がかかる
・集団行動を苦手とする
これらは、特性そのものによるケースもあれば、
環境要因によって行動が引き起こされているケースもあります。
例えば、
・読字困難(ディスレクシア傾向)があるのに文字量の多い教材を与える
・ワーキングメモリが弱いのに口頭指示が一度で済まされる
・感覚過敏があるのに騒がしい教室で学ばせる
こうした状況では、子どもは“学習意欲”を発揮しようにも土台が整っていません。
これは「学びに向かう力」以前の問題です。
したがって私たちは、特性を持つ子どもたちに対し、
まず以下の順番で支援を組み立てています。
・安心・安全の確保(情緒の安定)
・できる課題から着手(自己効力感の回復)
・成功体験の積み上げ(内発的動機の形成)
・新しい課題への挑戦(最近接領域の支援)
これはVygotskyの
「発達の最近接領域」(ZPD)
を実践レベルに落とし込んだものです。
■ 「できないことをできるように」は、特性のある子にとっては逆効果になり得る
多くの保護者から寄せられる相談は、
「うちの子は漢字が書けない」「計算が苦手」という
“できない部分の改善” を求める声です。
しかし、なないろ学習塾が最初に行うのはその逆、
**“できる部分を徹底的に伸ばすこと”**です。
理由は明確です。
👉 特性のある子は、学校生活で“失敗経験”を蓄積している
👉 自己効力感が著しく低下している
👉 「どうせ無理」が先に立ち、学習に向かえない
この状態で“苦手の克服”を求めても、意欲は生まれません。
自己効力感(Bandura)は、
「自分はできる」という感覚が意欲を生む
という概念ですが、これは特性のある子において最も重要な軸になります。
特性のある子は
“できない”フィードバック
“行動を矯正される経験”
“比較評価”
を受け続け、自信を喪失しているケースが多いため、
小さな成功の積み重ねこそが回復のスタートラインです。
■ 教師と塾の役割は違う——だからこそ連携できる
学校の授業は
・学年単位
・時間割
・カリキュラム
・教室空間
といった制約の中で運営されます。
対して、学校外の学びの場——特になないろ学習塾やSGSGでは、
環境・教材・進度・人間関係 を柔軟に調整できます。
例えば、
・文字を打つことが苦手な子にはタブレット併用
・黒板が見づらい子には個別プリント
・感覚過敏のある子には静かなブース席
・机に座り続けられない子にはスタンディングデスク
・一対一の会話が苦手な子は並列活動で関わる
こうした“環境調整”は、学校では難しい一方、塾やフリースクールでは可能です。
そのため、
👉 学校は「学びの場」
👉 塾やSGSGは「支える場」
として、互いを補完し合う構造が理想です。
特性のある子の支援は、一つの機関では完結しません。
多機関連携こそが、子どもの“学びに向かう力”を育てる土台になります。
■ 「なないろ学習塾」が採用している核心的なメソッド
ここでは、教育関係者の皆さまに向けて、
なないろ学習塾が実践する支援の特徴をまとめます。
① 「強さと困難さアンケート」による特性の可視化
入塾時には、
・できること
・苦手なこと
・興味関心
・感覚特性
・情緒の状態
などを丁寧に抽出します。
これは“診断”ではなく、学習デザインの基礎資料です。
② 成功体験の意図的設計
最初の指導で必ず「できた」と感じられる課題を設定します。
これにより、
“学びは怖くない” という認知変容を促します。
③ 褒めるのではなく、事実をフィードバックする
「すごいね」ではなく、
「ここまで自分でできたね」「さっきよりスムーズだね」
という プロセス評価 を徹底します。
評価言語は、特性のある子にとって極めて重要です。
④ 発達の最近接領域(ZPD)を応用した段階支援
・支援があればできる
・少し頑張ればできる
・すぐにはできない
この三層を見極め、負荷の調整を行います。
⑤ 「できる領域」の拡張を優先する
特性のある子は、
“苦手を直す”アプローチに反応しにくい
という研究知見があります。
なないろ学習塾では
・得意を伸ばす
・嫌いではない学習から入る
・学びの快感を再体験させる
ことを優先します。
これは長期的に見ると、
結果として苦手分野の改善につながる
という逆説的な効果を生みます。
■ まとめ——“学びに向かう力”を育てることが、未来の「教育の基準」になる
特性のある子どもを支える教育は、
もはや一部の専門領域ではなく、学校教育全体が取り組むべき基盤的テーマ です。
第1話〜第5話でお伝えしてきたように、
・子ども時代の特性
・特性を抱えた教師としての経験
・解放区で見えた生徒の本質
・SGSG・なないろ学習塾の必要性
“・学びに向かう力”の再構築
これらはすべて一本の線でつながっています。
👉 子どもは「できない」のではなく、「環境が合っていないだけ」。
👉 できることを伸ばす教育は、特性のある子の回復の根幹。
👉 教師・家庭・学校外支援の三者連携が新しい教育の常識になる。
“学びに向かう力”を育てることは、
学力以前の“人が育つための基礎”であり、
今後の教育の中心軸になると確信しています。
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