中学生向け:自分だけの『視点』で差をつける読書感想文
中学生が陥りがちな「ありきたり感想文」の罠
「この本を読んで、命の大切さを学びました」
「主人公の勇気ある行動に感動しました」
「友情の素晴らしさがよくわかりました」
中学生の読書感想文を読んでいると、こんな「模範的」な感想に出会うことがよくあります。文章は上手だし、内容も間違っていない。でも、なぜか心に響かないのです。
なぜでしょうか?
それは、「誰でも書けそうな感想」だからです。その本を読んだ100人が100人とも書きそうな、あまりにも「普通」の感想なのです。
昨年指導した中学2年生のBくんも、最初はこのパターンでした。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を読んで、「どんな悪人でも心の底には善があることがわかりました」と書いていました。
間違いではありません。でも、教科書にも載っていそうな感想です。
「批判的思考」を育てる読み方のコツ
そこで私がBくんに提案したのは、「批判的思考」で本を読む方法でした。
「批判的思考」というと難しく聞こえますが、要は「本当にそうかな?」「なぜだろう?」「別の見方はないかな?」と考えながら読むことです。
批判的思考の3つの視点
視点1:「本当にそうかな?」疑問視点
・作者の主張は正しいのか?
・主人公の行動は適切だったのか?
・この結末が最善だったのか?
視点2:「なぜだろう?」分析視点
・なぜ作者はこの設定にしたのか?
・なぜ主人公はこの選択をしたのか?
・なぜこの時代に書かれたのか?
視点3:「別の見方はないかな?」多角視点
・別の登場人物の立場なら?
・現代に置き換えるとどうなる?
・自分が作者ならどう書く?
Bくんに『蜘蛛の糸』をこの視点で読み直してもらいました。すると、面白い疑問が生まれました。
「お釈迦様は本当に慈悲深いのかな?カンダタを救おうとしたって言うけど、結局は見捨てたよね?」
これが、Bくんだけの独自の視点の始まりでした。
作者の意図と自分の解釈を分けて考える
中学生の読書感想文で大切なのは、「作者の意図」と「自分の解釈」を分けて考えることです。
多くの中学生は、「作者が伝えたかったこと」を探そうとします。でも、それだけでは面白い感想文は生まれません。
「作者の意図」の探り方
・この作品が書かれた時代背景
・作者の他の作品との共通点
・当時の社会情勢や価値観
・「自分の解釈」の深め方
・現代の自分にとってはどんな意味があるか
・自分の体験や価値観と照らし合わせると
・同世代の友達はどう思うだろうか
Bくんの場合、芥川龍之介が『蜘蛛の糸』を書いた大正時代の宗教観について調べました。そして、現代の中学生である自分の価値観と比較したのです。
その結果、こんな感想が生まれました。
「作者は仏教的な因果応報を描こうとしたのかもしれない。でも、現代の僕には、お釈迦様の行動が『試験』のように感じられる。カンダタの心を試すために蜘蛛の糸を垂らしたとしたら、それは本当の慈悲なのだろうか。」
社会問題と絡めた深い考察の書き方
中学生の読書感想文で差をつけるもう一つの方法は、現代の社会問題と絡めて考察することです。
効果的な社会問題との結びつけ方
ステップ1:本の中の問題を現代に置き換える
例:『蜘蛛の糸』の場合
「極楽から地獄を見下ろす」→「SNSで炎上を見ている人」
ステップ2:自分の身近な体験と結びつける
「他人を蹴落として自分だけ助かろうとするカンダタ」→「受験競争やテストの順位争い」
ステップ3:社会全体への視点を持つ
「個人の欲望と社会の調和」→「現代社会の格差問題」
実際の書き方例
「カンダタが他の罪人を蹴落とそうとする場面を読んで、僕は現代の受験競争を思い浮かべた。友達と一緒に勉強しているときは仲が良いのに、テストの結果が発表されると、なんとなくギスギスした雰囲気になることがある。
これは、限られた『極楽』(良い高校への合格)を目指して、みんなが競争しているからではないだろうか。カンダタと同じように、僕たちも無意識のうちに『自分だけは』と思ってしまっているのかもしれない。」
実際の指導例:中2のBくんが書いた印象的な一文
先ほどのBくんですが、最終的にこんな素晴らしい一文を書きました。
「この作品を読んで僕が考えたのは、『救い』とは誰かから与えてもらうものではなく、自分で掴むものなのではないかということだ。カンダタは蜘蛛の糸というチャンスを与えられたが、最後は自分の心の弱さで糸を切ってしまった。
現代の僕たちも、親や先生から様々なチャンスや機会を与えてもらっている。でも、それを活かすかどうかは結局自分次第なのだ。お釈迦様のような『救ってくれる誰か』を待っているのではなく、与えられたチャンスを自分の力で掴んでいきたい。」
同じ『蜘蛛の糸』を読んでも、Bくんならではの視点が光っていますよね。
中学生におすすめ:「考えさせられる」本の選び方
最後に、中学生の読書感想文におすすめの本のタイプをご紹介します。
哲学的なテーマを含む作品
『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)
『夏の庭』(湯本香樹実)
『西の魔女が死んだ』(梨木香歩)
社会問題を扱った現代小説
『十五少年漂流記』(ジュール・ヴェルヌ)
『アンネの日記』(アンネ・フランク)
『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)
心の成長を描いた青春小説
『坊っちゃん』(夏目漱石)
『風立ちぬ』(堀辰雄)
『蜜蜂と遠雷』(恩田陸)
選び方のポイント
・単純な勧善懲悪ではない複雑な作品
・現代にも通じる普遍的なテーマを持つ作品
・自分の年齢や経験で理解できる範囲の作品
明日は、小中学生共通で使える「構成の技術」をお伝えします。今日学んだ「自分だけの視点」を、どう読み手に伝わりやすい形にまとめるか、具体的な方法をご紹介しますのでお楽しみに!
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