定期テストは得意だけど実力テストが苦手な子~その特徴と本当の理由~

「努力が報われない」と感じる子どもたち

「あんなに頑張って勉強したのに...」

実力テストの答案を手に、こう呟く中学2年生のAさん。定期テストでは数学80点以上をキープしているのに、実力テストでは50点台。本人も保護者の方も、なぜなのか分からず戸惑っています。

実は、塾でこのタイプの相談が最も多いのです。

「うちの子、定期テストはそれなりに取れるんです。でも実力テストになると...本当に困ってます」

このタイプの子どもたちには、ある共通点があります。それは、とても真面目で努力家だということです。

決して怠けているわけではありません。むしろ、一生懸命頑張っているからこそ、実力テストで結果が出ないことに深く傷ついているのです。

【定期テスト型の子の典型的な勉強スタイル】

定期テスト型の子どもたちの勉強部屋を覗いてみると、こんな光景が見られます。

・典型的な勉強風景

・きれいにまとめられたノート

・カラフルな蛍光ペンで重要箇所がマーク

・暗記カードがたくさん

・何度も解き直したワークやプリント

・テスト範囲が細かくチェックされた計画表

素晴らしいですよね。この計画性と努力は、本当に価値のあるものです。

【よく見られる勉強方法】

・教科書やワークを繰り返し読む

・重要語句を何度も書いて覚える

・問題を解いて、答えを覚える

・テスト範囲の問題を完璧にする

・先生が「ここ出るよ」と言った場所を重点的に

この勉強法、短期的には非常に効果的です。だからこそ、定期テストでは点数が取れるのです。

実際、テスト2週間前から計画的に準備し、テスト範囲を徹底的にやり込めば、定期テストでは80点以上取れることが多いです。

しかし、ここに大きな落とし穴が隠れています。

なぜ「理解」ではなく「暗記」になってしまうのか

ある日の塾での出来事です。

中学2年生のBくんに、前の学期に習った一次関数の問題を出してみました。定期テストでは90点取れていた単元です。

「先生、これどうやって解くんでしたっけ?」

2ヶ月前に完璧に解けていたはずの問題が、解けなくなっていたのです。

「定期テストのときは解けてたよね?」

「はい、でももう忘れました...」

これが、定期テスト型の子が抱える最大の問題です。

「覚えること」に集中しすぎて、「理解すること」が疎かになっている

彼らは決して手抜きをしているわけではありません。むしろ、真面目に、一生懸命、テスト範囲の問題を繰り返し解いています。

でも、その勉強は「問題と答えのパターンを覚える」勉強になっていて、「なぜそうなるのか」という本質的な理解には至っていないのです。

4つの理由

理由①:それで結果が出てしまうから

定期テストでは、授業で扱った問題の類題が多く出ます。だから「パターンを覚える」だけでも点数が取れてしまうのです。そして「この方法で正しい」と思い込んでしまいます。

理由②:時間がないから

定期テストは、通常5教科以上を2週間で準備します。「じっくり理解する時間がない。とにかく覚えよう」という心理が働きます。

理由③:「理解する」方法を知らないから

実は多くの子どもたちが、「理解するための勉強法」を具体的に知りません。学校でも塾でも「覚えなさい」とは言われますが、「理解しなさい」の具体的な方法は教わっていないのです。

理由④:覚える方が「楽」だから

理解するには思考力が必要です。「なぜ?」と考え続けるのは、実は疲れる作業。それに比べて、覚えるだけなら単純作業で済みます。無意識のうちに、楽な方を選んでしまうのです。


塾で見た衝撃的な場面「先生、これ習ってません」

こんなこともありました。

中学3年生のCさん。定期テストの数学は平均85点。でも実力テストでは50点台。受験を控えて焦っているお母さんから相談を受けました。

「先生、なぜこんなに差があるんでしょうか?」

そこで、Cさんと一緒に、中1から中3までの全範囲を確認してみることにしました。

中1の方程式の文章題を出すと...

「先生、これ習ってません」

いえ、習っています。定期テストでも解けていました。でも、今は完全に忘れているのです。

中2の連立方程式も、一次関数も、確率も、同じでした。

「先生、私、中学で何を勉強してきたんでしょう...」

Cさんは涙目でこう言いました。これは本人が悪いのではありません。「テストが終わったら忘れる勉強」を続けてきた結果なのです。


実力テストで困る具体的なシーン【教科別】

実力テストで定期テスト型の子が困る場面を、教科別に見てみましょう。

【数学】

定期テスト:「二次方程式の問題」と範囲が明確で、解き方も分かっている

実力テスト:「一次関数と図形の融合問題」など、どの単元の知識を使えばいいか分からない

つまずきポイント:「この問題、何の公式を使うの?」

【英語】

定期テスト:習った文法・単語の範囲内で、先生のプリントと似た問題

実力テスト:初見の長文、複雑な文構造、知らない単語も多い

つまずきポイント:「単語の意味が分からなくて、文章が読めない」

【国語】

定期テスト:授業で扱った文章が出る(内容を覚えていれば対応可能)

実力テスト:完全に初見の文章で、読解力が問われる

つまずきポイント:「文章の意味が読み取れない」「記述問題が書けない」

【理科】

定期テスト:実験の手順や結果を覚えればOK、計算問題も同じパターン

実力テスト:「なぜそうなるのか」を問われる、実験結果から考察する問題

つまずきポイント:「暗記した知識だけでは解けない」

【社会】

定期テスト:年号、人名、用語を覚えればOK

実力テスト:歴史の因果関係、地理の理由、時代背景の説明を求められる

つまずきポイント:「覚えた知識はあるけど、説明できない」


すべてに共通しているのは、「覚えた知識」だけでは対応できないということです。


この特性は「弱点」ではなく「才能」

ここまで読んで、「うちの子はダメなのか...」と落ち込まないでください。

定期テスト型の子どもたちが持つ特性は、社会に出てからも非常に役立つ素晴らしい能力なのです。

社会で活きる能力

・計画性:プロジェクトを計画的に進める力

・真面目さ:任された仕事を確実にこなす力

・継続力:コツコツ努力を積み重ねる力

・目標達成能力:期限までに成果を出す力

・丁寧さ:細部まで気を配る力

これらは、仕事でもスポーツでも、あらゆる場面で求められる能力です。大企業で活躍している人、プロジェクトリーダーとして成功している人の多くは、この「計画的に取り組む力」を持っています。

問題は、この素晴らしい特性に**「理解する力」「応用する力」をプラスすること**なのです。

保護者ができる最初の一歩

お子さんが定期テスト型だと分かったら、今日から以下のことを試してみてください。

①テスト前の声かけを変える

❌「ちゃんと覚えた?」「何回解いた?」

⭕「どういう仕組みか説明できる?」「なぜその答えになるか分かる?」

②テスト後の振り返りを変える

❌「何点取れた?」「どこ間違えた?」

⭕「どの問題が面白かった?」「一番難しかったのはどれ?なぜ難しかったの?」

③日常会話で「なぜ?」を増やす

「今日のニュース、なんでこうなったと思う?」

「このお花、なんでこの季節に咲くんだろうね?」

「電子レンジって、どうやって温めてるんだろう?」

こんな会話を、1日1回でも入れてみてください。

④勉強を「教えてもらう」

「お母さん、この歴史の流れがよく分からないから教えて」

「お父さん、この数学の問題、どうやって解くの?」

人に教えることで、お子さん自身の理解が深まります。

⑤1ヶ月前の復習を習慣に

テストが終わったら終わり、ではなく、1ヶ月後にもう一度見返す習慣をつけましょう。長期記憶を作る第一歩です。

明日は、「実力テストは得意だけど定期テストが苦手」という、一見不思議なタイプのお子さんについて解説します。「普段はパッとしないのに、実力テストでは力を発揮する」この子たちには、他の子にはない特別な才能があるのです。

今夜、お子さんに「今日学校で習ったこと、お母さん(お父さん)に教えてくれる?」と聞いてみてください。どれだけ「理解して」いるか、どれだけ「覚えただけ」か、が見えてくるはずです。


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