実力テストは得意だけど定期テストが苦手な子~隠れた才能の見つけ方~

先生を驚かせる「逆転現象」の正体

「え、この子がこんなに?!」

実力テストや模試の結果を見て、思わずこう言ってしまうことがあります。普段の定期テストでは平均60点台なのに、実力テストでは突然80点以上。しかも、応用問題や初見の問題をしっかり解けている。

保護者の方も最初は「まぐれかしら?」と首をかしげます。でも、次の実力テストでも同じように良い点数が取れる。これは決してまぐれではありません。

この子たちには、他の子にはない特別な才能があるのです。

25年間教員をやってきて、このタイプの子どもたちの中から、難関高校や難関大学に進学する生徒が多く出ています。なぜなら、彼らが持っている「理解力」「応用力」こそが、高いレベルの学習で最も重要な能力だからです。


実力テスト型の子の「もったいない日常」

しかし、塾で見ていて、いつも残念に思うことがあります。実力テスト型の子どもたちは、普段の学校生活で正当に評価されていないのです。

よく見る実力テスト型の子の学校での姿

・提出物の期限をよく忘れる、または出さない

・ノートが汚い、白紙のページがある、そもそも書かない

・「面倒くさい」「だるい」が口癖

・テスト前でも焦っている様子がない(やってないから)

・でも授業中の発言は的確で、理解は早い

・授業で習っていない問題も解けることがある

先生からは「もっと真面目にやれば伸びるのに」「才能はあるんだから頑張れ」と言われ、保護者の方は「なぜ普段からきちんとできないの?」と悩む。

保護者面談でよくこんな言葉を聞きます。

「先生、うちの子、頭が悪いわけじゃないと思うんです。でも、やる気がないというか...定期テストはいつもボロボロで。どうしたらいいんでしょう」

でも、これには理由があるのです。決してやる気がないわけでも、怠けているわけでもないのです。


この子たちの頭の中で起きていること

実力テスト型の子どもたちと話していると、こんな言葉をよく聞きます。

「この問題、前に似たようなの解いたことある気がする」

「公式の意味が分かれば、覚えなくても使える」

「歴史って、つながりが見えると面白いですね」

「なぜこうなるのか分かったら、他の問題も解けました」

彼らは、知識を「点」ではなく「線」や「面」で捉えているのです。

例えば、歴史の勉強で:

定期テスト型:「1600年・関ヶ原の戦い・徳川家康が勝利」と個別に暗記

実力テスト型:「なぜ関ヶ原で戦う必要があったのか?豊臣家の力を削ぐため。では、その後なぜ徳川幕府は長く続いたのか?」と因果関係で理解

数学の勉強で:

定期テスト型:「二次方程式の解の公式」を暗記して使う

実力テスト型:「なぜこの公式で解けるのか」を理解した上で使う。だから忘れても導き出せる

実力テスト型の子は、理解に時間がかかります。でも一度理解すると、その知識は長期記憶として定着し、応用も効くのです。

中学3年生のDくんはこう言いました。

「先生、僕、暗記が嫌いなんじゃなくて、意味のない暗記が嫌いなんです。なぜそうなるかが分かれば、覚えようとしなくても自然に覚えてるんです」

まさにその通りなのです。


なぜ定期テストでは点数が取れないのか?4つの理由

「理解力があるなら、定期テストでも点数取れるはずでは?」

そう思いますよね。保護者の方も同じ疑問を持ちます。でも、実力テスト型の子が定期テストで苦戦するのには、明確な理由があるのです。

理由①:「細かいこと」に価値を感じられない

年号や人名、化学式、英単語など、「覚えるだけ」のことに興味が持てません。

「1603年に江戸幕府ができた」→「だから何?それがどうしたの?」

「H2O」→「水だって分かってるのに、なんで覚える必要があるの?」

彼らにとっては、「なぜ江戸幕府ができたのか」「なぜ水はH2Oなのか」の方が重要なのです。

理由②:「作業的な勉強」が性に合わない

同じ問題を何度も繰り返し解く、暗記カードを作る、ワークを丁寧に埋める...こういった「作業」が苦手です。

「1回解いて理解したのに、なんでまた解くの?」

「カード作る時間があったら、別のこと調べたい」

すぐに飽きてしまい、違うことに興味が移ってしまうのです。

理由③:完璧主義ゆえの「やらない」選択

実力テスト型の子は、実は完璧主義な一面があります。

「全部理解してから問題を解きたい」

「ちゃんと分かってないのに、答えだけ覚えるのは嫌だ」

その結果、理解に時間がかかりすぎて、テスト範囲全部を終わらせることができません。

そして「中途半端にやるくらいなら、やらない」という選択をしてしまうのです。

理由④:提出物やテスト勉強を「軽視」している

「理解していれば、提出物なんて出さなくても大丈夫」

「ワークを埋めるより、教科書を読んでいる方が勉強になる」

こう考えている子が多いです。間違ってはいないのですが、学校のシステムでは提出物が成績に大きく影響します。

また、定期テストは内申点に直結するということの重要性を、彼らはあまり実感していません。


塾で見た「大逆転」の瞬間

中学3年生のEくん。中1・中2の定期テストは5教科平均300点程度(500点満点)。でも、中3の4月の実力テストで突然420点を取ったのです。

お母さんも驚いて面談に来られました。

「先生、何が起きたんでしょうか?特別な勉強をしたわけでもないのに...」

Eくんに聞いてみると、こう答えました。

「やっと点と点がつながった感じがしたんです。中1で習ったことと、中2で習ったことが、実は全部つながってたんだって気づいて。そしたら、全部の勉強が意味を持ち始めたというか...」

これが、実力テスト型の子に起こる「覚醒」の瞬間です。

知識がある程度蓄積されると、突然それらがネットワークを作り始めます。バラバラだった知識が一気につながり、全体像が見えるようになるのです。

この瞬間を迎えると、実力テスト型の子の学力は急激に伸びます。Eくんはその後、地域トップの高校に合格しました。


この才能は将来、大きな武器になる

実力テスト型の子が持つ能力は、高校・大学、そして社会人になってから、計り知れない価値を持ちます。

将来活きる能力

・本質を見抜く力:表面的な情報に惑わされず、核心を捉える

・応用力・創造力:既存の知識を組み合わせて、新しいアイデアを生む

・初見の問題への対応力:未知の課題にも柔軟に対処できる

・長期的な視点:目先の利益ではなく、本質的な価値を見る

・論理的思考力:「なぜ?」を繰り返し、因果関係を理解する

これらは、AIが発達する時代に、人間に最も求められる能力なのです。

実際に、東京大学や京都大学、難関大学に進学する生徒の多くは、実力テスト型の思考パターンを持っています。彼らは暗記型の勉強ではなく、理解型の勉強をしているからです。

また、起業家、研究者、クリエイターなど、新しい価値を生み出す仕事で活躍している人の多くも、このタイプです。


今すぐ定期テストの成績も上げる秘訣

「将来のことはいいから、今の成績を何とかしたい!内申点が心配!」

保護者の方の正直な気持ちだと思います。安心してください。実力テスト型の子が定期テストでも点数を取る方法、実はあるのです。

秘訣①:「最低限ライン」を明確にする

全部完璧にしようとしない。「ここだけは押さえれば70点取れる」というポイントを絞ります。

英語:教科書本文の重要文を10個だけ完璧に

数学:基本問題だけ確実に。応用問題は捨てても良い

理科・社会:重要語句30個だけに絞る

「え、それだけでいいの?」と思うかもしれませんが、実力テスト型の子にとっては、「全部やる」より「最低限を確実に」の方が成功率が高いのです。

秘訣②:「なぜ覚えるのか」を明確にする

暗記にも意味づけをします。

年号:時代の流れの中での意味を理解してから覚える

英単語:語源や使われ方を理解してから覚える

化学式:なぜその組み合わせになるのかを理解してから覚える

意味が分かると、実力テスト型の子は驚くほど記憶に残ります。

秘訣③:提出物を「ゲーム化」する

「期限までに出せたら1ポイント」のように、ゲーム感覚で取り組みます。

ゲームが好きな子が多いので、提出物管理をゲームのようにすると、意外とハマります。

秘訣④:テスト範囲を「謎解き」にする

「この範囲で一番難しい問題は?」

「先生が出しそうな問題は?」

「この単元の一番面白いポイントは?」

テスト勉強を「謎解き」や「予想ゲーム」にすると、俄然やる気が出ます。

秘訣⑤:興味のある1教科から始める

5教科全部頑張ろうとせず、まず1教科だけ。

「理科だけは定期テストも頑張る」と決めて、そこで成功体験を積みます。すると、他の教科にも波及します。

大切なポイント

実力テスト型の子に「定期テストも頑張れ」と言うときは、やり方を変える必要があるということを理解してください。

定期テスト型の子と同じ勉強法を強要しても、うまくいきません。この子たちには、この子たちなりのアプローチがあるのです。

明日は、両タイプの子どもたちが「苦手なテストを克服するための具体的な勉強法」を詳しく解説します。定期テスト型の子が実力テストで点を取る方法、実力テスト型の子が定期テストで点を取る方法、それぞれに効果的なテクニックをお伝えします。

今夜、お子さんに「学校の勉強で、一番『なぜ?』って思ったことは何?」と聞いてみてください。その答えから、お子さんの思考の深さが見えてくるはずです。そして、その好奇心を大切に育ててあげてください。それが、この子たちの最大の武器なのですから。


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