子ども・若者世代の"良き話し相手"になるための対話術

「上から目線」にならない関わり方のコツ

「最近の若い子は...」

「私たちの頃は...」

こんな言葉、つい口にしていませんか?

実は、これが子どもたちとの距離を一気に広げてしまう魔法の言葉なのです。

奉還町ユースセンターに来る中高生たちに「どんな大人が苦手?」と聞くと、必ず返ってくる答えがあります。

「説教してくる大人」

「自分の価値観を押し付けてくる大人」

「話を聞かないで、すぐに答えを言ってくる大人」

子どもたちは、対等に話を聞いてくれる大人を求めています。年齢や経験の差はあっても、「一人の人間として尊重してくれる」関わり方が大切なのです。

奉還町商店街のカフェで働く大学生スタッフは、こんなふうに中高生と接しています。

中学生:「テスト、全然ダメだった...」

スタッフ:「そっか、しんどかったね。どの教科が難しかった?」

中学生:「数学が特に...」

スタッフ:「数学かー。私も苦手だったな。どんなところでつまずいた?」

アドバイスをするのではなく、まず気持ちを受け止める。そして、一緒に考える姿勢を示す。これが「上から目線」にならないコツです。


沈黙を恐れない - 待つことの大切さ

「何か話したいことある?」と聞いて、返事がなかったら、あなたはどうしますか?

多くの大人は、沈黙を埋めようと、さらに質問を重ねてしまいます。でも、それが逆効果になることがあります。

子どもたちは、すぐに言葉にできないことがたくさんあります。気持ちを整理するのに時間がかかることもあります。

まるごとフリースクールで子どもたちと関わるスタッフは、「待つ」ことを大切にしています。

ある日、学校に行けなくなった小学5年生の男の子が来ました。「学校、どう?」と聞いても、黙って首を振るだけ。

スタッフは無理に話させようとせず、隣に座って一緒にボードゲームを始めました。30分ほど経ったころ、その子がぽつりと言いました。

「実は、クラスの友達と喧嘩しちゃって...」

そこから、少しずつ話してくれるようになったのです。

沈黙は「話したくない」のサインではなく、「どう話したらいいか考えている」時間かもしれません。焦らず、待つ。それも大切なコミュニケーションです。


「どうしたの?」より効果的な最初の一言

子どもに声をかけるとき、最初の一言は重要です。

「どうしたの?」「何かあった?」と聞かれると、子どもは「何か言わなきゃいけない」というプレッシャーを感じてしまうことがあります。

代わりに、こんな声かけを試してみてください。

状況を描写する声かけ

「今日は何だか静かだね」

「いつもより疲れてそうだね」

「最近、あまり見かけなかったね」

共有の時間を提案する声かけ

「一緒にお茶飲まない?」

「ちょっと散歩しない?」

「何かやることある?手伝おうか?」

興味・関心を示す声かけ

「それ、何やってるの?面白そうだね」

「そのゲーム、人気あるよね。どんな内容なの?」

「その本、読んでみたいと思ってたんだ」

ユースセンターでは、スタッフが自然にこんな声かけをしています。

「今日も来てくれたんだね。何する?」

「そのイラスト、めっちゃいいじゃん!」

「お腹すいた?一緒に何か作ろうか?」

プレッシャーを与えず、でも「あなたのことを気にかけているよ」というメッセージが伝わる。そんな声かけが理想です。


デジタルネイティブ世代との距離の縮め方

今の子どもたちは、生まれたときからスマホやSNSがある世代です。「デジタル=悪」と決めつけるのではなく、彼らの文化として理解することが大切です。

奉還町ユースセンターでは、あえてゲームやSNSの話題を積極的に取り入れています。

「そのゲーム、どんな感じ?」

「最近、何のYouTube見てる?」

「そのアプリ、私も使ってみようかな」

こんなふうに、デジタルの話題を否定せず、むしろ教えてもらう姿勢を見せると、子どもたちは喜んで話してくれます。

ある中学生は、自分がハマっているゲームについて1時間も熱く語ってくれました。そして最後に、こう言いました。

「話を聞いてくれる大人、初めてかも。お母さんは『そんなのやめなさい』って言うだけだから」

デジタルは、子どもたちと大人をつなぐ架け橋にもなるのです。

相談される前に"話しやすい人"になる日常の工夫

「相談に乗る」のではなく、「日常的に話せる関係」を作る。これが新しい相談のカタチです。

商店街でできる日常の工夫をご紹介します。

〇挨拶を大切にする

毎日同じ時間に通る子には、「おはよう」「お帰り」と声をかける。名前を覚えて呼んであげる。

〇小さな変化に気づく

「髪型変えた?」「今日は荷物多いね」「何だか嬉しそうだね」こんな声かけが、「自分を見てくれている」という安心感につながります。

〇子どもの「好き」を尊重する

「そのキャラクター、人気だよね」「その靴、かっこいいね」子どもが大切にしているものを認める言葉をかけましょう。

〇一緒に何かをする機会を作る

商店街なら、お店の手伝いをお願いする。料理を一緒に作る。イベントの準備を一緒にする。共同作業は関係を深めます。


「アドバイスしたい」を我慢する - 共感と傾聴の実践

最後に、最も難しいけれど最も大切なことをお伝えします。

それは、「アドバイスしたい気持ちを我慢すること」です。

子どもが悩みを話してくれたとき、大人はつい「こうしたらいいよ」と言いたくなります。でも、多くの場合、子どもが求めているのは「解決策」ではなく「共感」なのです。

アドバイスしたくなる場面での対応例

子ども:「友達と喧嘩しちゃった...」

❌ すぐアドバイス

「じゃあ、謝りに行けばいいじゃない」

⭕ まず共感

「そっか、喧嘩しちゃったんだね。どんな気持ち?」

子ども:「むかつくし、悲しいし...」

⭕ 気持ちを受け止める

「むかつくし、悲しいんだね。そんな気持ちになるのも無理ないよ」

子ども:「どうしたらいいかな...」

⭕ 一緒に考える

「どうしたいと思う?私でよければ、一緒に考えるよ」

ユースセンターでは、女子高生同士がこんな対話を自然にしています。年齢が近いからこそ、「わかるー!」「それ、つらいよね」という共感がすぐに生まれるのです。

大人も、同じように共感を大切にできたら、子どもたちにとって話しやすい存在になれます。

明日は、なぜ学校でも家庭でもない「第三の居場所」が必要なのか、その理由について深掘りします。子どもたちの居場所づくりに関心のある方は、ぜひお読みください。


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