家で一人の時間をどう見守る? - 不登校の子の『日中』を理解する

午前中に親が出勤するときの心配と不安

「今日も学校に行けなかった。でも私は仕事に行かなければならない。家に一人残して大丈夫だろうか...」

朝、玄関を出る瞬間に感じるこの不安。25年間、多くの保護者の方から聞いてきた切実な悩みです。

子どもの部屋のドアは閉まったまま。「行ってきます」と声をかけても、小さな返事があるかないか。仕事中も気になって、何度もスマホを確認してしまう。お昼休みには家に電話をかけてみる。でも出ない。不安はさらに大きくなる。

こんな毎日を送っている保護者の方、決してあなただけではありません。

同時に、家に残された子どもも不安を抱えています。「お母さんを心配させている」「自分のせいで仕事に集中できないかもしれない」という罪悪感。その罪悪感がさらに子どもの心を重くして、動けなくしてしまうのです。

まず知っていただきたいのは、親が仕事に行くことに罪悪感を持つ必要はないということです。生活を支えることも、子どもを守ることの一つです。そして、子どもが一人で家にいること自体が、必ずしも悪いことではないのです。

実は「一人の時間」が回復に必要な理由

不登校の子どもにとって、一人の時間は実はとても大切な意味を持っています。

学校という場所は、想像以上にエネルギーを使う場所です。朝決まった時間に起きて、決まった服を着て、決まった場所に行く。教室では常に誰かの視線を感じ、授業中は集中し続けなければならない。休み時間も気を遣い、給食も周りに合わせて食べる。一日中、気を張り詰めている状態なのです。

そんな状態が続いて心が疲れ果てた時、まず必要なのは「何も求められない時間」です。

一人でいる時間は、子どもにとって「誰にも気を遣わなくていい時間」です。起きたい時に起きて、食べたい時に食べて、寝たい時に寝る。何もしなくてもいい。何も期待されない。ただ存在していていい。

この感覚が、心の回復には不可欠なのです。

実際、私たちの教室に通うようになった子どもたちに聞くと、多くが「家で一人でいる時間に、少しずつ元気が戻ってきた」と言います。最初は一日中布団の中にいた子が、昼ごろには起きられるようになり、リビングに出てこられるようになり、少しずつ生活のリズムを取り戻していくのです。

焦って「何かさせなければ」と思う必要はありません。何もしない時間こそが、子どもにとっての回復の時間なのです。


見守りと放置の違いを知る

ただし、「一人の時間が大切」といっても、完全に放置していいわけではありません。大切なのは「見守り」と「放置」の違いを理解することです。

見守りとは、子どもに適度な自由を与えながらも、必要な時にはすぐにサポートできる体制を整えておくことです。

具体的には以下のような工夫ができます。

朝、仕事に出る前に「今日も家でゆっくりしててね。お昼ご飯は冷蔵庫に入れておくから、食べられそうだったら食べてね」と声をかける。強制ではなく、選択肢を与える言い方がポイントです。

連絡手段を確保しておくことも大切です。「何かあったらいつでも連絡してね。お母さんはすぐに電話に出られないかもしれないけど、メッセージは必ず見るから」と伝えておきましょう。

そして、本当に緊急の時の連絡先も共有しておきます。近くに住む親戚、信頼できる友人、場合によっては塾や相談機関の電話番号なども伝えておくと、子どもも親も安心です。

帰宅したときの声かけも重要です。「ただいま。今日はどうだった?」と聞くのではなく、「ただいま。お母さん、今日は疲れちゃった」と自分のことを話す方が、子どもは話しやすくなります。子どもが何か話してくれたら、それは大きな一歩。話さなくても、それはそれで問題ありません。

「信頼している」というメッセージを、言葉と態度で伝え続けること。これが見守りの本質です。

仕事と子育ての両立で悩む保護者へ

「仕事を辞めるべきでしょうか」という相談を、よく受けます。

経済的な事情、キャリアの問題、様々な理由で仕事を続けざるを得ない方も多いでしょう。あるいは、仕事があることで自分自身の心の安定を保っている方もいらっしゃるかもしれません。

私の答えはいつも同じです。「無理に辞める必要はありません。ただし、働き方を見直す余地があるなら、検討してみてください」

例えば、出勤時間を少し遅らせてもらう、週に何日かは在宅勤務にしてもらう、時短勤務を利用する、などです。すべての職場で可能なわけではありませんが、上司や人事に事情を説明することで、思いがけず理解を得られることもあります。

職場への伝え方としては、「子どもが体調を崩していて、しばらく通院やケアが必要になります」という表現で十分です。詳細を話す必要はありません。不登校という言葉を使わなくても、子どもの状況を伝えることはできます。

そして、利用できる社会資源を知っておくことも大切です。

地域の教育相談センター、児童相談所、スクールカウンセラー、フリースクール、適応指導教室、そして私たちのような学習塾。子どもの居場所は学校だけではありません。日中、子どもが安心して過ごせる場所を見つけることで、親の不安も軽減されます。

完璧な親である必要はありません。完璧な環境を用意する必要もありません。

大切なのは、子どもに「あなたのことを大切に思っている」というメッセージを伝え続けることです。仕事をしながらでも、それは十分に可能です。

明日は、全く外出できない子どもへの声かけについてお話しします。今日は、お子さんが家で一人で過ごす時間を「回復の時間」として見る視点を、少し持ってみてください。

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