「『外に出たくない』と言う子への寄り添い方 - 焦らず、責めず、待つ技術
「外出できない」状態を理解する
「体は元気そうなのに、なぜ外に出られないの?」
多くの保護者の方が抱く疑問です。熱があるわけでもない、ケガをしているわけでもない。それなのに、玄関から一歩も出られない我が子を見て、戸惑いと焦りを感じてしまいます。
でも、少し考えてみてください。
大人でも、大きなプレゼンテーションの前日に緊張で眠れなかったり、苦手な人に会う前に足が重くなったりする経験はありませんか? 体は元気でも、心が「行きたくない」と強く訴えている状態です。
不登校の子どもたちが感じているのは、それよりもはるかに強い不安や恐怖です。
外に出ると誰かに会うかもしれない。「学校は?」と聞かれるかもしれない。同級生に会ったらどうしよう。先生に会ったらどうしよう。近所の人の視線が怖い。こんな自分を見られたくない。
不安は不安を呼び、恐怖は恐怖を増幅させます。そして、家の中だけが唯一の「安全な場所」になっていくのです。
これは決して「甘え」でも「怠け」でもありません。心が発している「今は休みたい」という正当なメッセージです。骨折した足で走れないのと同じように、疲れ果てた心で外に出ることはできないのです。
やってはいけない声かけ・やるべき声かけ
外出できない子どもに対して、つい言ってしまいがちな言葉があります。でも、その言葉が子どもの心をさらに追い詰めてしまうことがあるのです。
NGワード集
「いつまで家にいるつもり?」
この言葉は、子どもに「早く出て行け」と言っているように聞こえます。自分が家族の重荷になっていると感じさせてしまいます。
「少しくらい外に出たら?」「コンビニまででいいから」
親は軽い気持ちで言っているかもしれませんが、子どもにとっては「そんな簡単なこともできない自分」を突きつけられる言葉になります。
「このままじゃダメだよ」
子ども自身が一番それを感じています。さらに追い打ちをかける必要はありません。
「お母さんの若い頃は...」
比較は何の解決にもなりません。時代も環境も違います。
効果的な声かけ
では、どんな声かけが子どもの心に届くのでしょうか。
「今日はどんな一日だった?」
外出したかどうかではなく、その子なりの一日を認める質問です。布団の中で本を読んだ、音楽を聴いた、それも立派な一日です。
「体調はどう? 何か食べたいものある?」
体調を気遣う言葉は、子どもに「大切にされている」と感じさせます。
「お母さん、今日スーパーで○○見つけたよ」
外の世界の情報を、プレッシャーなく共有する。子どもが興味を示したら、それはつながりの第一歩です。
「一緒にいてくれてありがとう」
家にいることを責めるのではなく、家族の一員として存在してくれていることへの感謝を伝えます。
大切なのは、「外に出させよう」とする意図を手放すことです。子どもの今の状態を、そのまま受け止める。その姿勢が、実は一番の支援になるのです。
家の中でできる小さな変化のきっかけ
外出できない状態が続くとき、無理に外に連れ出そうとするのではなく、家の中で小さな変化を作ることから始めましょう。
ステップ1: カーテンを開ける、窓を開ける
部屋にこもりきりの子どもに、「カーテン開けてみない? 今日は天気がいいよ」と提案してみます。外の空気を部屋に入れる。それだけで、少し世界が広がります。
無理強いは禁物です。「開けたくない」と言われたら、「わかった。また気が向いたらでいいよ」と受け止めましょう。
ステップ2: 玄関まで行ってみる
郵便物を取りに行く、宅配便を受け取る、そんな小さなきっかけで玄関まで出られることがあります。「ちょっと荷物重いから、玄関まで来て受け取ってくれる?」という自然な頼み方がいいでしょう。
ステップ3: ベランダに出てみる
ベランダは外でもあり、家の延長でもあります。「洗濯物取り込むの手伝ってくれる?」という声かけや、一緒にベランダでお茶を飲む時間を作ってみるのもいいでしょう。
〇段階的なステップの考え方
大切なのは、これらのステップに期限を設けないことです。1週間でステップ1、2週間でステップ2、という計画は不要です。
子どもが自分のペースで、自分のタイミングで動き出すのを待ちます。そして、小さな一歩があったときには、「すごいね」と褒めるのではなく、「ありがとう」と感謝を伝える方が効果的です。
「すごい」は評価の言葉ですが、「ありがとう」は対等な関係での感謝の言葉です。子どもを一人の人間として尊重する姿勢が、自信の回復につながります。
〇親自身の気持ちの整理方法
子どもが外出できない状態を見守るのは、親にとっても大きなストレスです。
〇他の家庭と比較しない勇気
SNSを見れば、楽しそうに学校に通う子どもたちの写真があふれています。「うちの子だけ...」と思ってしまう気持ちは自然です。
でも、それぞれの家庭には見えない事情があります。表面的な幸せと自分の家庭を比べることに意味はありません。
今の我が子を見る。他の誰でもない、この子を見る。その決意が必要です。
〇「今のこの子」を受け止める練習
「こんなはずじゃなかった」「あの子は明るい子だったのに」
過去の子どもの姿と今を比較してしまうこともあるでしょう。でも、今のこの子が本当のこの子です。明るかった時も、今も、どちらも本当のこの子の姿です。
人は変わります。状況によって違う面を見せます。それは成長でもあります。
「今のあなたも、お母さんは大好きだよ」というメッセージを、心の中で何度も繰り返してみてください。そして、それが自然に伝わるような言葉や態度を探していきましょう。
相談できる場所を持つ大切さ
一人で抱え込まないでください。
学校のカウンセラー、地域の教育相談センター、児童相談所、そして私たちのような教育の現場で子どもたちと関わっている人たち。話を聞いてもらえる場所、共感してもらえる場所を持つことが、親自身の心の安定につながります。
親が安定していることが、子どもの安心感につながります。だから、親自身のケアも、子どものサポートの一部なのです。
明日は、学校には行けないけれど外出はできる子どもについてお話しします。今日は、「外に出られない」という状態を否定せず、「今はそういう時期」として受け止める視点を持ってみてください。
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