学校には行けないけど外出はできる子 - その一歩を否定しない関わり方
「学校に行けないのに遊びに行くなんて」の誤解
「学校には行けないって言うのに、友達と遊びに行くなんて...」
このもどかしさ、多くの保護者の方が感じていることだと思います。朝は「お腹が痛い」「頭が痛い」と言って学校を休んだのに、午後には友達と約束して出かけていく。あるいは、平日は家にいるのに、休日には元気にショッピングモールに行きたがる。
「本当に辛いなら、遊びにも行けないはずじゃない?」「学校に行けないのは仮病?」そう思ってしまう気持ちは、とてもよくわかります。
でも、これは矛盾でも仮病でもありません。学校と他の場所では、子どもが感じるプレッシャーがまったく違うのです。
学校という場所を想像してみてください。朝の決まった時間に行かなければならない。教室に入ると、多くの視線がある。授業中は座っていなければならない。発表を求められることもある。評価される。比較される。期待される。
一方、友達と遊ぶ時間や買い物は、自分で選択できます。行きたいから行く。嫌だったら断れる。途中で帰ることもできる。評価されない。比較されない。
この違いは、想像以上に大きいのです。
実際、私たちの教室でも、学校には通えていないけれど塾には来られる子が多くいます。なぜなら、塾は「自分で選んで来ている場所」だからです。強制されていない。そして、少人数で自分のペースで学べる環境がある。
学校に行けないけれど外出はできる。これは、子どもが完全に心を閉ざしているわけではないという、実は良いサインなのです。
外出できることを責めない・否定しない
「学校には行けないのに遊びには行けるの?」
この言葉を、グッと飲み込んでください。
この言葉は、子どもに「学校に行けない自分は、楽しむ資格もない」というメッセージを送ることになります。すると子どもは、外出することにも罪悪感を持ち始めます。友達からの誘いを断るようになります。休日も家にこもるようになります。
そして、唯一開いていた外への窓が、閉ざされてしまうのです。
親の本音を言えば、「遊びに行く元気があるなら、学校に行ってほしい」。その気持ちは痛いほどわかります。でも、その本音をそのまま伝えることが、必ずしも良い結果を生むわけではありません。
実は、外出できているということは、子どもの心にまだエネルギーが残っているということです。完全に心が折れてしまうと、友達とも会えなくなります。外出する気力も失います。
だから、外出できることは歓迎すべきことなのです。
おすすめの声かけは以下のようなものです。
「友達と会えるんだね。楽しんでおいで」
否定せず、肯定する。ただそれだけです。
「何時に帰る予定? 晩ご飯どうする?」
日常的な確認だけをする。特別扱いしない。
「お帰り。どうだった?」
帰ってきたときに、自然に話を聞く姿勢を見せる。
子どもが罪悪感を持たずに外出できる環境を守ること。これが、実は学校復帰への大きな一歩になるのです。
外出できる時間を成長のチャンスに
学校には行けないけれど外出はできる。この状態を、成長のチャンスと捉えることもできます。
図書館・書店での過ごし方
平日の昼間、図書館や書店は比較的空いています。学校に行けない時間を、読書の時間にする。これは素晴らしい選択です。
「今日は何か面白い本見つかった?」という会話から、子どもの興味や関心を知ることができます。そして、その興味が次の学びにつながることもあります。
実際、不登校期間中に図書館で過ごした時間が、後々の進路選択に影響したという子も少なくありません。
公園での過ごし方
体を動かすことは、心の健康にもつながります。散歩をする、公園のベンチで過ごす、それだけでも十分です。
もし親の時間が取れるなら、平日の午前中に一緒に公園に行ってみるのもいいでしょう。他の人が少ない時間帯なら、子どもも気兼ねなく過ごせます。
習い事やフリースクールへの一歩
外出できるエネルギーがあるなら、習い事やフリースクールを検討するのも一つの選択肢です。
週に1回だけのプログラミング教室、月に数回の美術教室、午後だけのフリースクール。学校とは違う形で、社会とのつながりを持つことができます。
私たちの塾でも、学校には通えていないけれど塾には来ている子がたくさんいます。彼らは塾で学び、友達を作り、少しずつ自信を取り戻していきます。そして、タイミングが来たときに、学校への復帰や次のステップに進んでいくのです。
社会とのつながりを保つ意義
不登校で一番心配なのは、社会から完全に孤立してしまうことです。人との関わりが全くなくなると、社会性を育む機会が失われ、将来の自立が難しくなる可能性があります。
でも、学校以外で社会とつながっていれば、その心配は大きく軽減されます。友達と遊ぶ、習い事に通う、図書館で司書さんと言葉を交わす、コンビニで買い物をする。これらすべてが、社会とのつながりです。
学校に行けないことと、社会から孤立することは、別のことです。そして、外出できているお子さんは、社会とのつながりを保てているのです。
「ずるい」と感じる兄弟姉妹への対応
不登校の子どもに兄弟姉妹がいる場合、新たな問題が生まれることがあります。
「お兄ちゃんだけ学校休んでずるい」「私も休みたい」
弟や妹からこんな言葉が出てくることがあります。毎日頑張って学校に行っている子からすれば、不公平に感じるのは当然かもしれません。
きょうだいの気持ちに寄り添う
まず、その気持ちを否定しないことが大切です。
「ずるいと思うよね。お母さんもその気持ちわかるよ」
一度受け止めた上で、説明を加えます。
「でもね、お兄ちゃんは今、心がとても疲れていて、学校に行くことができないの。体が疲れた時に休むのと同じで、心が疲れた時も休む必要があるんだよ」
子どもの年齢に応じて、わかりやすい言葉で説明しましょう。
家族全体のバランスの取り方
不登校の子に注意が向きがちですが、他の子どもたちにも十分な愛情と時間を注ぐことが重要です。
学校に行っている子との時間を意識的に作る。「今日は二人だけでお買い物に行こうか」といった特別な時間が、その子の心を満たします。
また、家族全員で過ごす時間も大切です。不登校の子だけが特別扱いされているわけではない、家族みんなが大切にされている、という実感を持てるようにしましょう。
それぞれの子に必要な配慮
公平と平等は違います。それぞれの子が、それぞれに必要なサポートを受ける。それが真の公平です。
不登校の子には休む時間と空間が必要。学校に通っている子には、頑張りを認める言葉と時間が必要。それぞれの子に、それぞれに合った関わり方をする。
これは簡単なことではありません。でも、親が一生懸命バランスを取ろうとしている姿勢は、子どもたちに伝わります。完璧でなくても、その姿勢こそが大切なのです。
明日は、学校との連絡の取り方についてお話しします。今日は、お子さんが外出できていることを、一つの成長のサインとして肯定的に見る視点を持ってみてください。
-------------
なないろ学習塾では現在、新規入塾者を募集中です。(岡山教室・倉敷教室共に受け入れ可能)相談・見学・無料体験随時受付中です。気になる方は一度お電話ください。
電話086-897-2476(受付時間 平日13-20時 土曜10-16時)
0コメント