ゲームばかりの毎日でも大丈夫? - 不登校中のゲームとの向き合い方

不登校中のゲームは「逃避」ではない

「一日中ゲームばかりしている」

不登校の相談で、必ずと言っていいほど出てくる悩みです。朝起きてゲーム、昼もゲーム、夜もゲーム。食事の時間以外はずっと画面に向かっている我が子を見て、不安と焦りが募ります。

「このままでいいはずがない」「将来が心配」「せめて勉強だけでもしてほしい」

その気持ち、痛いほどわかります。

でも、少し視点を変えてみましょう。不登校中の子どもにとって、ゲームはどんな意味を持っているのでしょうか。


ゲームが果たしている役割を理解する

学校に行けなくなった子どもの心は、深く傷ついています。自信を失い、将来への不安を抱え、「自分はダメな人間だ」という思いに苦しんでいます。

そんな時、ゲームは心の避難場所になります。

・ゲームの世界では:

・努力すれば必ず結果が出る(レベルが上がる、アイテムが手に入る)

・失敗してもやり直せる

・誰にも評価されず、比較されず、自分のペースで進められる

・小さな成功体験を積み重ねられる

・達成感を味わえる

学校で失った「できる」という感覚を、ゲームで取り戻しているのです。

実際、25年間子どもたちを見てきて、不登校中にゲームに没頭していた子の多くが、回復期に入ると自然にゲーム時間が減っていくのを見てきました。ゲームは「逃避」ではなく、「回復のための時間」だったのです。


心の回復に必要な居場所

「何もしないよりはゲームでもいいか」という考え方もありますが、それは少し違います。

ゲームは「何もしない」のではなく、「心を回復させる活動」なのです。

布団から出られなかった子が、ゲームのためにリビングに出てくるようになる。食事に興味を失っていた子が、ゲームの合間におやつを食べるようになる。誰とも話さなかった子が、ゲームの攻略法を話してくれるようになる。

これらはすべて、回復のサインです。


オンラインでつながる友達の存在

最近のゲームの多くはオンライン機能があり、遠くの友達や知らない人とも一緒にプレイできます。

親からすると「顔も知らない人とゲームなんて」と不安になるかもしれません。でも、子どもにとっては大切な社会とのつながりです。

学校に行けず、リアルな友達関係が途切れてしまった子どもにとって、オンラインでのつながりは孤独を和らげてくれます。チャット機能で会話し、協力してゲームをクリアし、感謝し合う。これも立派なコミュニケーションです。

完全に孤立してしまうより、はるかに健全な状態と言えます。


「ゲームばかり」と責めたくなる時

それでも、親として不安になる気持ちは消えません。特に以下のような状況では、声をかけたくなります。

親の不安の正体を見つめる

「ゲームばかり」と責めたくなる時、その奥にある本当の不安は何でしょうか。

・学力が落ちることへの不安

・進学・就職ができないのではという不安

・昼夜逆転による健康への不安

・親としてきちんと育てられていないという罪悪感

・周りの目が気になる不安

これらの不安は、どれも親として当然のものです。でも、その不安を子どもにぶつけても、解決にはなりません。

まず親自身が、自分の不安と向き合うことが大切です。そして、その不安を誰かに話すこと。配偶者、友人、カウンセラー、私たちのような教育相談の場。不安を言葉にすることで、少し楽になります。


昼夜逆転への心配にどう対応するか

不登校中によく起こるのが、昼夜逆転です。夜遅くまでゲームをして、昼間寝ている。これは親として心配になる状況です。

ただ、これも一つの過程と考えましょう。

学校に行かなくてよいのなら、朝起きる必要はありません。夜の方が静かで落ち着くという子もいます。昼夜逆転も、子どもなりの生活リズムなのです。

とはいえ、将来的には改善が必要です。でも、今すぐに直そうとする必要はありません。

段階的なアプローチ:

・まずは生活リズムの記録を取る(何時に起きて、何時に寝ているか)

・食事の時間を一つの目安にする(せめて夕食は一緒に食べる)

・朝の光を浴びる習慣を少しずつ作る(カーテンを開ける、ベランダに出る)

・医師やカウンセラーに相談する(必要に応じて)

焦らず、長期的な視点で取り組みましょう。

生活リズムへの緩やかなアプローチ

「明日から朝7時に起きなさい」という突然の変更は無理です。子どもにとっても、体にとっても負担が大きすぎます。

おすすめは、週に30分ずつ早めるなど、ゆっくりとしたペース調整です。

また、起床時間を早めることより、就寝時間を少しずつ早めることに注目する方が効果的です。「今日は0時には寝ようか」といった声かけから始めましょう。


ゲーム時間の管理は必要? 不要?

「ゲームは1日○時間まで」というルールを作るべきか。多くの保護者が悩むポイントです。

不登校中の特別なルール作り

結論から言うと、不登校中は通常時とは違うルールが必要です。

学校に通っている子に対しては「宿題が終わってから1時間」というルールが有効かもしれません。でも、学校に行けない子にとって、ゲームは唯一の心の支えかもしれません。それを厳しく制限することは、さらに追い詰めることになりかねません。

ただし、全く何もルールがないのも、子どもにとって不安です。「どこまでやっていいのか」という指針がないと、かえってゲームに依存してしまうこともあります。

バランスの取れたアプローチ:

・厳格な時間制限は設けない

・でも、家族との時間は大切にする(食事は一緒に、など)

・健康に影響が出ない範囲で(睡眠、食事、運動)

・子どもと話し合いながら、ゆるやかな目安を作る

一般的な「ゲーム制限」とは違う考え方

不登校中のゲームと、一般的な「ゲームのやりすぎ問題」は、根本的に違います。

学校に通っている子がゲームばかりして勉強しないのは、優先順位の問題です。でも、不登校の子がゲームをしているのは、心を守るための行動です。

この違いを理解せずに、同じように制限してしまうと、子どもの心の支えを奪うことになります。

信頼関係を崩さない範囲での提案

それでも、何らかの働きかけが必要な場合もあります。その時は、「命令」ではなく「提案」の形を取りましょう。

例:

・「ゲームやめなさい」→「そろそろお腹すいたから、一緒に何か食べない?」

・「何時間やってるの!」→「ずっと座ってて疲れない? 少し体動かす?」

・「夜更かしするな」→「明日、午前中に一緒に買い物行きたいんだけど、何時ごろなら起きられそう?」

子どもの行動をコントロールしようとするのではなく、一緒に過ごす時間を提案する。この姿勢の違いが、大きな差を生みます。


ゲームから見える子どもの回復サイン

実は、ゲームをしている様子を観察することで、子どもの回復度合いを知ることができます。

オンラインで会話できている

ゲーム中に誰かと会話している声が聞こえますか? ボイスチャットで笑っていますか? これは大きな回復のサインです。

人と話すエネルギーが戻ってきている証拠です。

攻略や達成に意欲を見せている

「このボスを倒したい」「このレベルまで上げたい」という目標を持っていますか? ゲームの攻略法を調べていますか?

目標を持ち、それに向かって努力する。これは学習意欲の萌芽です。

生活の中に小さな楽しみがある

ゲームのアップデート情報を楽しみにしている、好きなキャラクターの話をしてくれる、新しいゲームに興味を示す。

これらは「未来に楽しみがある」という感覚の表れです。深刻な抑うつ状態では、こういった楽しみを感じることができません。

これらは立派な成長の兆し

一見、何も変わっていないように見えても、子どもの内側では確実に変化が起きています。

ゲームを通して、少しずつ心のエネルギーが回復している。小さな成功体験を積み重ねている。人とのつながりを保っている。

これらはすべて、次のステップに進むための大切な準備です。


ゲーム以外の活動への自然な誘導

回復が進んできたら、ゲーム以外の活動にも少しずつ広げていきたいものです。でも、焦りは禁物です。

強制しない・期待しすぎない

「そろそろ勉強も始めたら?」「本でも読んでみたら?」

こういった言葉は、子どもにプレッシャーを与えます。せっかく回復してきた心に、また負担をかけることになります。

代わりに、さりげなく選択肢を増やしていく方法があります。

一緒に料理、一緒に動画鑑賞

子どもが興味を示しそうな活動を、一緒にやってみる提案をしてみましょう。

・「今日のお昼、一緒にパスタ作らない?」

・「面白そうな映画見つけたんだけど、一緒に見る?」

・「散歩がてら、コンビニまで一緒に行かない?」

ポイントは「一緒に」です。子ども一人でやらせるのではなく、親も一緒に楽しむ。そうすることで、「義務」ではなく「楽しい時間」になります。

「ながら」で会話できる時間を作る

料理をしながら、散歩をしながら、ドライブをしながら。

何かをしながらの会話は、面と向かって話すより気楽です。ゲームの話からでもいいのです。「そのゲーム、どんなストーリーなの?」と聞くことから、会話が広がることもあります。

会話が生まれれば、少しずつ子どもの興味や考えが見えてきます。そこから、新しい活動のヒントが見つかるかもしれません。

子どものペースで広がる世界

大切なのは、親が道筋を作るのではなく、子ども自身が興味を持ったことを応援する姿勢です。

ゲームの音楽が好きなら、音楽制作に興味を持つかもしれません。ゲームのストーリーが好きなら、小説や映画に興味が広がるかもしれません。ゲームのイラストが好きなら、絵を描き始めるかもしれません。

ゲームは終着点ではなく、むしろ新しい興味への入口になることがあるのです。


まとめ:今日からできる3つのこと

5日間のシリーズを通して、不登校の子どもとの向き合い方をお伝えしてきました。最後に、今日からできる具体的な3つのことをまとめます。

1. 子どもの「今」を受け止める言葉をかける

「今のあなたでいいよ」

「お母さんは、あなたの味方だよ」

「焦らなくていいからね」

完璧な言葉である必要はありません。あなたの心からの言葉が、子どもに届きます。

2. 完璧な親でなくていいと自分に言い聞かせる

不安になってもいい。イライラしてもいい。疲れてもいい。完璧な対応ができなくてもいい。

親も人間です。完璧である必要はありません。「今日はうまくいかなかったな」と思う日があっても、明日また関わり直せばいいのです。

子どもは、完璧な親を求めているわけではありません。一生懸命自分に向き合おうとしてくれる親を求めているのです。

3. 相談できる場所とつながる

一人で抱え込まないでください。

学校のカウンセラー、教育相談センター、フリースクール、そして私たちのような塾。子どもの居場所を見つけることも大切ですが、親の相談場所を持つことも同じくらい大切です。

なないろ学習塾では、不登校の子どもたちとその保護者の方の相談を、25年間受け続けてきました。学習支援だけでなく、通信制高校への転籍サポート、フリースクールとの連携など、それぞれのお子さんに合った道を一緒に探しています。

一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。

不登校は、終わりではありません。新しい成長の形の始まりです。

お子さんの「今」を受け止め、寄り添い続けること。それが、親としてできる最も大切なことです。そして、その一歩一歩が、必ず未来につながっていきます。

来週も、保護者の皆様のお役に立てる情報をお届けしますので、どうぞお楽しみに。

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